更新日 4/Dec/2011-18/Apr/2017

ここでは近作の一行詩を掲載しています。

新しい一行詩は逐次FaceBookでも

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空白の不在性 たまさかその鏡には己が顔が映し出されたりするな
軒下に乾しし赤靴下 雪積もれどサンタ来ず

約されし地に住まう黒き羽持つ心よ お前は何処の森を刈るのだ この無明の大地で
大河にはなぜか 一筋 空気の通る穴があり そこでは 行き来する思いが躓くらしい あなたの魂(こん)が迷いませんように」
とびきりの悲しみ持ちて微笑め 届くとも届かぬとも まだ来ぬ闇の底なれば
山の上に大きな岩が乗っている 岩には深い穴が穿ってある 私は毎日山に登り夕暮れまで穴を覗いて暮らした そして 私は穴になった」
薄たなびく程よき原に崩れし庵見え 山姥が集めし星くずをカリコリ食す蟇はおり
唐松林抜け来る遠雷に 抱擁解く 緩慢なる息と薄き瞳孔 しばし ただ漠念とす
入道雲の芯へと沈みつつ お前もまた己が罪に震え上がるのか そうか だが 私は待っているよ」
幻視 アララットの山頂に揺れる水塊ありて 箱船飲み込むは二の月の軌跡なり

連作1:祖父の話 ナホトカに密航帰りの船底で抱き合う友はついに凍れり 乏しき北の地故に」
連作2:祖母の話 開墾の村に収穫なく 移りし海境の番屋 何時も赤い腰巻きなんだよ ソ連来るから」
連作3:父の話 血の一滴と言われ 零式は 床の合わせすら外れつつ 大地のするする流れ見え 大きなバッテン目指すのさ」
連作4:母の話 原野番外の湿地に遊びし瞳の大きい娘 樺太で口墨を入れたという」
連作5:私の話 基地の女はクリームのレコード借してくれ あたしアメちゃん追っかけててさ でも寒いねここ 夏なのに」

連作1:河口に海鵜が集まっている 蜆をとる夫婦がいる 私は餌のない糸を垂れている 猫が数匹堤防でじゃれている 遠くで子どもが叫んでいる 月見草が揺れている 蟻が物陰から覗いている 雲はひとかたまりもなく 自転車が国道を走っていく」
連作2:梢で鵯が何かをついばんでいる 向こうの畑で老婆が草取りをしている 私は掘り起こした馬鈴薯をより分けている 犬が峠道をゆっくりやってくる 麦の穂が揺れている 栗鼠が葉陰から覗いている 陽の光はここまで届き 郵便のオートバイが土手を走っていく」
連作3:電線に烏が並んでいる 窓ふきのゴンドラが少し揺れている 私はベンチに腰掛け携帯ゲームをしている OLがコンビニに入ったり出たりしている 花水木が陽を浴びて揺れている 老人が窓を少し開け外を見ている 風はぬうように流れてきて 配送車が何処かへ消えていく」