滞在記1 フランクフルト〜シュツットガルト
滞在記2 シュツットガルト
滞在記3 シュツットガルト〜ストラスブール
滞在記4 ストラスブール〜ランス(シャンパーニュ)
滞在記5 ランス(シャンパーニュ)
滞在記6 ランス〜パリ
滞在記7 パリ
14/jun/05パリ・ガルニエオペラ座

 パリのオペラ座は艶やかだ。シュツットガルトも肉体の緊張感が良かったが、個人的にはパリの小柄な娘が揃ってる方が好きかな。さてチケットが何故か個室。ところが6人で一部屋。あつこは最前列だが、私はその後。後列の女性に気を遣って身体を動かせない。至近距離の頭で隠れる。ステージ左右の一部だけだ。ときどき回り込んでくる時にしか見えない。演目は何も分からなかった。残念。
 「オルフェとエウデュケ」が終わってなお、まだ明るい。今日は簡単な車中食だったのでお腹がすいた。しかし小生エアコンの壊れたBMWのせいか、あのドイツ爺に移された風邪のせいかとても疲れてて不機嫌。「オペラ座の周りには沢山レストランがある!」。でも小生にはデパートしか目に入らない。そのまま歩いて帰り、ホテル近くの中華デリでチャーハンやら数点を買って、ウォータも買って、戻る。心優しくも半分残しておいてくれたようだが、朝まで爆睡。ゴメン。
パリにオペラ座は2つある。ガルニエは古いほう。ロビーの天窓から光が入る。
シャンデリアのある天蓋。シャガールの天井絵。
「オルフェとエウデュケ」カタログと売店で売っていたカード集。
15/jun/05パリ

 翌日はリッチモンドに2泊目の予約してなかったのが仇になる。パリで航空ショーの期間中ということもあってか、受付カウンターでねばるも「ノン」。
 重たいスーツケース引き摺ってホテル探し。明日はウィーンに向け北駅から列車なのだからということで、北駅周辺に移動。まずユーレールパスのチェックと列車の予約。あつこはガイドブックのトラベル会話集の必要項目を係員に指さして、たいして苦労せずに終了。〈こんな方法、識字率の悪い地域じゃ通用せんな〉さて、ホテル。ところが、ところがどこ捜してもツーリストインフォメーションがない。ホーム出入り口に近いとこのインフォメーションは鉄道専用だった。「ちょっと見て回ってくる」と駅構内のカフェに小生を置き去り。スーツケースをテーブルに置いたままじゃ、ビールのお代わり買いに行けず、ちびちび飲んで待つ。かなり不安だし、ちょっと惨め。「駅の中じゃダメみたいだから、外行こう。行って直にあたる」〈思い切りいいのは分かるけど、ガタガタとスーツケース押してうろうろするんかいな〉「取り敢えずあそこのカフェで休もう」〈わたしゃさっきから休んでる〉「ちょっと用足ししたら、いくね」。さっさと街路に消えてしまった。
 すると小生の向かいのテーブルに若い小柄な黒人女性が座る。何げなく外の風景を眺めながら、やはりビールをちびちびやってると、どうも路駐の車に乗ったチンピラ風の白人若造が彼女に何やら指図してるように見える。彼女はまっすぐ小生を観察する様子。携帯をかけ始める。会話のなかに「ジャポネ」が入っているような気がする。小生トランクを2つ股の間にぎゅっと挟み込む。別の車が停車し、2人の男が降りてきて、顔はまっすぐ目は彼女に。めくばせしたのだろう。若干離れた窓際に座る。
こちらの様子をうかがってる。〈ははーん、置き引きか強盗さんだね〉
 そりゃ、こんな駅(東京で言えば上野?)傍のラフなカフェでスーツケースかかえて、ぼーっと座ってりゃ、いいカモだろうね。それでわかりやすい大げさなジェスチャーで首を外の車の男に向けた後、ゆっくりとさっきの2人組を見て、最後に黒人お姉ちゃんを見てやった。ほんで、また外の若造を観察すると、若造チンピラ店内に入ってきてお姉ちゃんの横に座り、一言二言耳打ちする。〈普通横じゃなくて向かいに座るだろ、女の向かいにさ〉2人組に目を向けるとさっと顔をそらす。〈みえみえ〉〈この店の中でいきなり組み伏せは、ないだろうな〉今度は若造チンピラが携帯をかけ始める。するとなぜか2人組の1人に電話がかかる。なんか関係ない会話してるそぶりで席をたち、外へ出た。〈おいおい、何も飲んだりしないでお帰りですか〉そのうち若造は携帯をお姉ちゃんに渡すと、これもまた外へ。さっきの2人組の車は居なくなり、若造はシートにもぐりこむ。お姉ちゃんの会話はなんか困った様子で、「だって、ほんとにぼーっとしたジャポネに見えたんだって」と言ってるようだった。(からっきしフラ語のヒアリングはだめな小生です)で、会話が終わるとお姉ちゃんも引き上げました。若造チンピラの運転する車のエンジン音に〈さいなら、残念でしたね。小心者のネズミ故いつも外敵にびくついてるんです〉。〈うーっ、怖かった。店のウェートレスもぐるだったら危なかった〉
 ほどなく明るい顔で戻って来て「だいぶ断られたけど、駅前のホテルとれたからね。VISAのパリセンター電話して捜して貰っちゃった。インターネットは無理だと思うけど」〈もう、何でもいいよ。早くおさまろうよ、荷物を置きにさ〉
パリ初日のホテルはリッチモンドオペラ。部屋に大量の水のペットボトルが散乱するのがお判りだろう。 北駅の東側。サン・マルタン運河を挟んだ新名所。雑貨屋が楽しいらしい。
15/jun/05パリ

 ホテルの移動も済んでスーツケース持ち歩く心配なくなったんで、気軽に外出できる。おっと、ちょっと休んだら夕方。お昼抜いたようなもん(カフェでちょっと摘んだ)だから、食事、食事と〈お前ら食う事しか考えとらんのんか〉。
 サンジェルマンデプレに出る。パリのメトロ(地下鉄)初体験。ここでは券売機の他に窓口がある。「まとめて10枚買うと安いのよ」と窓口で購入。夕方のメトロは混み合っている。世界中の人種が乗ってるんちゃうか? ドイツもそうだったが、出口で切符は回収しない。日本は出入り口でダブルチェックだから、人様を信用していない。メトロから外に上がると、「うわっ、パリ!」。オペラ座や大聖堂なんかも当然パリなんだけど、この石造りの建物に挟まれた繁華街、人が溢れる舗道にいると、そんな気になった。
 いいね、うん、いい。なんて言うか、巷というやつがさ、いいんだ。歩いてる人も建物のシミもみんな文化を感じてしまう。ここを歩いてたんですねサルトルやクレジオ、サティーが。反吐はいてたんですねモジリアニやヴォルスが。高校生のときは強烈に憧れてたんだよね。「せめて新しき背広でも・・・」分かる気がしてた。みてみて、図面ケース小脇に抱えたおじさんも濃いサングラスかけた黒いTシャツにブレザーのお兄さんも、かっこいいしょ(なんでかここだけ北海道弁)。パリです。パリなんですよ!〈あんた午前中の恐怖はどこ?〉
 同じような路地を行ったり来たりして、楽しんだ。開いてる店も閉まってる店も好き。気になるシーフードレストランが2軒あったが、値段が分からないんで、店の前に、黒板にチョークで手書きメニュー&料金のお店に入る。アメリカ人ツアー客がクーポンで食べられるらしく、英語が飛び交う。私達が案内されたのは奥の方。隣の隣に品の良い老婦人が静かにディナーを。私らは当然奮発して(なんで当然かの理由はない)結構いいシャンパンを注文。俄然ウェーター機嫌良くなる。「イングリッシュメニュー?」〈あるんなら初めからもってこんかい!〉あつこはパリにきてからエスカルゴを食べたがっていて、メニューのエスカルプなにがしを指さした。ブー。はずれ。巨大なビーフカツレツが出てきちゃいました。小生は鴨料理を注文して事なきを得る。精算をお願いするとさっきのウェーター、「アリガト、オイシカッタデスアカ?」日本語です。おい、最初から言わんかい! ま、良いワイン(この場合シャンパンですが)は良質の酔いをもたらす、の喩えどおり、気分宜しくホテルへご帰還。あっ、もちろんあのサルトルやボーボワールが足繁く通ったカフェも観ました。
サンジェルマンデプレのレストラン。散策してて店先でお食事中のよそ様の残骸をめざとく見つけて、「あれにしよう」。ムール貝はあっというまに完食。シャンパンもボトルを1本消費。満足満足。フレンチポテトは言わずとも付く。
16/jun/05パリ

 北駅からウィーン行きの列車は夕方の5時過ぎ。
 夜行列車で「車中泊なんだから、いろいろ買おうよ」というわけで、再びサンジェルマンデプレに行く。朝、母に電話したらニュースでフランスでは今がサクランボの旬だと言う。「買って食べなさい」はいはい、そうですねと、デプレの八百屋さんで買う。アメリカンチェリーと日本で呼んでるものと同じ品種か、黒っぽくて甘い。
 最近急増中のギャラリー街をひやかす。作家が小さなスペース借りてるようなのも発見。分かるようなそうじゃないぜというような。
 昼食は上の写真のレストランでムール貝その他、これまた結構なお値段のシャンパンボトル1本。ムール貝の殻入れボールやシャンパンクーラーがテーブルから道路側にはみ出してぶら下げられる。はは、お品のない事で、すんません。日本人も多く行き交うが、それぞれ目を逸らす。(私はそちらさまとは関係ないんですからねって、カンジ?)
 大阪にも出店するパン屋Paulの横に、旨そうなデリ発見。まるまんまのローストチキンや何やかや、ワイン専門店でそこそこのシャンパン入手。これで今夜はコンパートメント独占して、ウィーンまでゆっくりしましょ。